「介護の日本語教室」講座内容まとめ⑩ ~利用者とのコミュニケーション~

2022-03-31

 介護現場では、利用者とのコミュニケーションは非常に重要なことです。言語コミュニケーションだけではなく、表情(ひょうじょう)、身振り(みぶり)手振り(てぶり)、体勢(たいせい)や視線(しせん)などの言葉以外の非言語コミュニケーションも大切です。

 良いコミュニケーションを取るには、傾聴(けいちょう)、共感(きょうかん)、受容(じゅよう)の3つのポイントがあります。つまり、相手の話をよく聞くこと、相手の気持ちを共有(きょうゆう)すること、相手の考えを批判(ひはん)せず、ありのままを受け止めることです。

 このように、利用者とコミュニケーションを続けることにより、信頼関係(しんらいかんけい)を構築(こうちく)することができます。


◆共感・同意(どうい)・関心(かんしん)を示す相槌(あいづち)

 「傾聴」は、ただ話を聞くだけではなく、相槌をうって「相手の話を聞いている」ということを表現する必要があります。

①  そうですね。/わかります。

              例)A: 最近、急に寒くなって、いやだわ。

                 B: そうですね。/わかります。私も寒いのが苦手なんです

②  それは~ですね。

             例)A: 来週、孫の誕生日だから、プレゼントを贈ろうと思って。

                B: それはいいですね。お孫さん喜ばれますよ。

③  ~んですね。

             例)A: 私、煮魚・・・嫌い。

                B: 煮魚が嫌いなんですね。

④  ~なんですか。

             例)A: 昨日、悪い夢を見て、眠れなかったの。

                B: 眠れなかったんですか。どんな夢でしたか。

⑤  すごいですね。/さすがですね。

             例)A: (レクリエーション活動で)できた!

                B: すごいですね。/さすがですね。


声かけの基本的な表現

会話だけがコミュニケーションではなく、普段の些細な声かけもコミュニケーションのひとつです。そもそも、どんな介護業務でも声かけから始まります。例えば、食事の前に、「食堂に行きましょうか」といった意思確認や、「右手を拭きますね」と、これから何をするのかを利用者に伝えることです。

 

①~ませんか。/~ましょうか。「提案(ていあん)の表現」      例) 消灯(しょうとう)の時間に 「そろそろお休みになりませんか」

                                                                        「そろそろお部屋の電気を消しましょうか」


②~(て)はいかがですか。「提案の表現」      例) トイレ誘導(ゆうどう)の際に 「お休み前にお手洗いに行ってはいかがですか」

                                                                     「お食事の前にお手洗いはいかがですか」


③~ましょうね。「促(うなが)しの表現」     例) 朝の時間帯に 「そろそろ朝食の時間ですね。テレビを消しましょうね」

                                                      「30分後に朝食ですから、着がえましょうね」

 

④~ていただけますか。「依頼(いらい)の表現」   例) 着がえの際に 「ズボンを左足からはきます。左足を上げていただけますか」


介護の現場では、利用者と関わりあう時の動作の基本として、イーガンが提唱(ていしょう)したSOLER理論が基になっています

      S(Squarely):利用者とまっすぐに向き合う

      O(Open):開(ひら)いた姿勢(腕、足を組まないなど)

      L(Lean):相手へ少し体を傾(かたむ)ける

      E(Eye Contact):適切に視線を合わせる(見下ろさないなど)

      R(Relaxed):リラックスして話を聞く